未知の銀河へ とある旅人の訪問記

さて、あれから数時間が経過して太陽系からも離れた。

まだしばらくは加速せずにゆっくりと進むようだ。

やがて窓の外の景色が太陽系にいる頃よりも暗くなってきた。いや、正確には暗い箇所もあると言ったほうが良いのかもしれない。

Aは船内の少し離れた場所で何か作業をしていた。

彗介は外の暗い空間を眺めていた。

すると急に不安と寂しさに襲われはじめた。

地球にはいつ戻れるのだろう、このまま悪い宇宙船とかに遭遇して拉致されたりしないだろうか。今頃家族はどうしているだろうか。

そんな不安を察してか、Aが話しかけてきた。

「大丈夫、心配いりませんよ。あと1日もすればワープします。目的地へだいぶ近づきますよ」。

それを聞いて少し安心したが、その情報はあと何日で地球に帰れるのかという目安にはならなかった。

彗介はいわゆるホームシックにかかったのであった。

しかし、それもつかの間、やがて輝く星団が遠くに見えてきた。

Aの説明によれば、あれはプレアデス星団らしい。

「あの星団は彗介たち地球人にも名前だけは有名でしょう」。

Aは地球人の置かれている状況を、地球や地球人の進化的な流れから把握しているに違いない。有名というのは2012年のアセンションが叫ばれた頃の事を指しているのだろうか。彗介はそれ以上聞かなかった。

さて30分ほど経過したが、また一人、彗介は窓の外を眺めていた。ゆっくりとはいえ、プレアデス星団にはしだいに近づきつつあるのが目で見てわかった。船内にいると体感では分からないが、外を見ているとやはりものすごい速度だ。

しばらくして今度はある女性のことを思いはじめた。そういえば彼女はどうしているのだろう。彼女とは、魔術学校で知り合った女性であった。彗介と同じように、いやそれ以上にスピリチュアルや宇宙人的なことを体験して知っているのであった。

40年近く今までそのような分野について詳しく語りあえる女性と出会った事のなかった彗介にとって、その出会いは大きな喜びであった。パートナーにならなくとも、定期的に会えて一緒にその分野の話ができるだけでも嬉しかったのだ。彗介自身はスピリチュアルな分野に興味があるものの、関連した体験は少なかったので、講座で彼女と話せるのが楽しかったのだ。そして、彼女本来の趣味は彗介とは違っているようだが、そのことは全く気にならなかった。

「彼女も今の自分と同じような宇宙旅行の体験を既にしているかもしれない。よく夢で宇宙人と交流する体験をしたと話してくれたっけ・・・」

もしかしたら、これも夢なのかもしれない。ふと彗介は思った。しかし、すぐに否定した。「いや、違う。心から今湧き上がった宇宙への衝動は現実だ」。その衝動の一部は過去世での体験に基づいているような気がしたのであった。それは戦いの過去世で、スターウォーズのような戦いを体験したのかもしれない。しかし、その衝動は例えると、自分自身を宇宙へと突き動かすロケットの発射のエネルギーにになってくれた気がするのであった。